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鉄道ファンにはさまざまな種類があり、鉄道車両の撮影を好む「撮り鉄」や、発車メロディーや列車の走行音を録音する「音鉄」など楽しみ方は人それぞれ。今回は鉄道ファンの中でも、廃線跡を訪れて楽しむ「廃線鉄」に注目します。
廃線鉄とは、すでに役目を終えた鉄道路線や廃線跡を訪ね歩き、その歴史や遺構を楽しむ鉄道ファンのスタイルを指します。
廃線ウォークに参加したり、トロッコやレールバイクで廃線跡を走ったり、駅舎やトンネルなどの遺構を巡ったりと、廃線鉄には他の鉄道趣味にはない独特の魅力があります。
この記事では、廃線鉄の魅力と全国のおすすめ廃線跡スポットをご紹介します。
「廃線鉄」は、単に過去の鉄道路線を懐かしむだけではありません。かつての鉄道が地域とどのように関わってきたかを知り、歴史や風景を体感しながら楽しめるのが廃線鉄の大きな魅力です。
とはいえ、廃線鉄の楽しみ方は多様で、単に廃線跡を眺めるだけでなく、全国の廃線跡を歩いたり、トンネルや橋梁などの遺構を探したり、レールバイクやトロッコで走ったりするのも廃線鉄の醍醐味です。近年は各地で廃線ウォークのイベントや廃線活用施設が整備され、廃線鉄ファンに人気を集めています。
こうした魅力から、廃線鉄は幅広い鉄道ファンや観光客に人気を集めています。
▲碓氷峠廃線ウォークイメージ
碓氷峠廃線ウォークは、1997年の北陸新幹線開業により廃止された信越本線・横川駅〜軽井沢駅間の旧線路跡を、一般社団法人安中市観光機構のガイド付きで歩いて楽しめるイベントです。
かつて関東と上信越地方を結び、急勾配で知られた碓氷峠を列車が駆け抜けていた姿を思い浮かべながら、数時間かけてゆっくりと廃線跡を歩くことができます。鉄道の歴史や技術に興味のある“廃線鉄”にとっては、まさに聖地とも言えるスポットです。
イベントに参加しなくても、遊歩道「アプトの道」を自由に散策することが可能です。「アプトの道」では、横川駅付近から峠の湯付近までの約6kmにわたる旧信越本線の廃線跡を片道で楽しむことができ、廃線鉄の心をくすぐる風景が広がっています。
トロッコ王国美深は、北海道中川郡美深町に位置するテーマパークで、昭和60年に廃止された「日本一の赤字ローカル線」として知られる国鉄美幸線の廃線跡を活用しています。ここでは、エンジン付きのトロッコを自ら運転し、往復10kmを約40分かけて走行することができます。
トロッコが走るルートには、旧国鉄時代の橋梁などがそのまま残されており、当時の美幸線の雰囲気をリアルに体感できます。鉄道の歴史や廃線跡に魅力を感じる“廃線鉄”にとっては、まさに夢のような体験ができるスポットです。
旧国鉄手宮線跡地は、北海道小樽市にある廃線跡の散策路で、小樽市中心部から小樽市総合博物館までの約1.6kmを歩いて楽しむことができます。小樽市総合博物館は、北海道鉄道の発祥地として知られており、鉄道ファンにとっても見逃せないスポットです
手宮線は、北海道初の鉄道「官営幌内鉄道」の一部として、幌内(三笠市)の炭鉱から小樽港へ石炭を運ぶために敷設されました。1962年に旅客営業が終了し、1985年に完全廃止となりました。
現在では、当時の線路跡を歩きながら鉄道の歴史に触れることができ、“廃線鉄”にとっては貴重な体験ができる場所です。旧国鉄時代の雰囲気を感じながら、のんびりと廃線跡を散策する時間は、鉄道のロマンを味わう絶好の機会です。
南部縦貫鉄道のレールバス(七戸駅跡)は、2002年に廃止されたローカル鉄道・南部縦貫鉄道の車両が一般公開されているスポットです。旧七戸駅跡に保存されている貴重なレールバスは、鉄道ファンの間でも高い人気を誇り、特に“廃線鉄”にとっては見逃せない場所となっています。
保存車両は、当時の姿をそのまま残しており、南部縦貫鉄道の歴史を肌で感じることができます。不定期で開催されるイベントでは、レールバスの車両内を見学したり、写真撮影を楽しんだりすることも可能です。廃線跡に息づく鉄道の記憶をたどる、廃線鉄にとって魅力あふれる体験ができるスポットです。
小坂鉄道レールパークは、廃止された小坂鉄道の線路や車両を活用した複合施設で、鉄道の歴史と懐かしい雰囲気を体感できるスポットです。レールバイクの体験乗車や、全国でも貴重な車両・機関車の見学ができるほか、かつての鉄道の息吹を感じながら楽しめるレールパークとなっています。
施設内には、かつて上野駅〜青森間を走っていた寝台特急「ブルートレインあけぼの」が簡易宿泊施設として営業しており、A寝台個室・B寝台個室に宿泊することも可能です。廃線跡を活用したこの施設は、鉄道の魅力を存分に味わえる場所であり、“廃線鉄”にとっては見逃せない聖地のひとつです。
大館・小坂鉄道レールバイクは、廃線鉄ファンに人気のスポットで、廃線となった小坂鉄道の線路を活用した体験型施設です。
ここでは、動力車が牽引する4人掛け対面座席付きのトロッコや、自転車感覚で楽しめるレールバイクに乗車でき、廃線跡の雰囲気を満喫できるのが魅力。廃線鉄の楽しみ方を体験できる観光施設として、鉄道ファンや家族連れにもおすすめです。
▲日中線記念館に保存されている車両イメージ
日中線記念館は、廃線鉄ファンに人気の旧国鉄日中線の熱塩駅を活用した施設です。駅舎をそのまま活かした館内には、旧駅事務室に当時を物語る貴重な資料が展示され、鉄道の歴史を間近に感じられる空間となっています。
さらに屋外には、迫力あるラッセル車や客車の保存展示、今も残る踏切警報器など、廃線跡ならではの風景が広がります。廃線鉄の魅力を存分に味わえる記念館として、鉄道ファンの訪問先におすすめです。
吾妻峡レールバイク アガッタンは、八ッ場ダム建設に伴う付け替えで廃線となった吾妻線の旧線路を活用した廃線鉄アクティビティです。自転車型トロッコに乗って、雄大な吾妻峡や八ッ場ダム周辺の景観を気軽に楽しめます。
ルート上では、日本一短い鉄道トンネルとして知られる「樽沢トンネル」や、最新式の八ッ場ダムを間近に望むことができ、鉄道ファンはもちろん観光客にも人気。走行距離は片道約2.4kmと程よく、自然と廃線鉄の魅力を同時に満喫できます。
長倉線未成線は、真岡線茂木駅から茨城方面へ延伸予定だったものの、太平洋戦争の影響で工事が中断され列車が一度も走らなかった未成線です。1937年に茂木~長倉間約12kmの工事が始まり、1940年までに約6kmが完成しましたが、その後は放置され廃線鉄スポットとなりました。
現在も路床やアーチ橋、トンネルなどが残されており、一般道から見学可能。さらに有料ツアーに参加すれば、普段は立ち入れないトンネル内部を歩く特別体験も楽しめます。鉄道の歴史と廃線鉄ロマンを味わえる貴重な未成線です。
つくば霞ヶ浦りんりんロードは、1987年に廃線となった筑波鉄道の線路跡を活用したサイクリングロードです。筑波鉄道は1918年に開業し、土浦駅から岩瀬駅まで18駅を結んでいました。1960年代には常磐線の上野駅や日立駅から行楽列車が筑波駅まで直通するほど多くの利用者で賑わいました。
現在のりんりんロードには、当時の勾配標や距離標がそのまま残されており、鉄道の歴史を感じながらサイクリングを楽しめるのが魅力です。さらに、土浦駅直結の「りんりんスクエア土浦」では、レンタサイクルやシャワー設備が整い、廃線鉄の名残とサイクリング観光を気軽に満喫できます。
全国には、鉄道ファンなら見逃せない廃線跡スポットが数多く存在します。歩いて廃線跡を巡ったり、トロッコやレールバイクで廃線路を体感したり、歴史ある鉄道遺構を間近で楽しむことができるのが廃線鉄の醍醐味です。
今回紹介した北海道から関東・東北のスポットは、いずれも廃線鉄ファン必見の場所ばかり。これから廃線鉄デビューする方も、全国の廃線跡を巡る旅で、鉄道の歴史や風景を楽しんでみてください。